カナダのコンビニ大手「アリマンタシュオン・クシュタール」から、およそ6兆円で買収提案を受けていたセブン&アイHDですが、買収防止を図るため、非上場化を検討していることがわかりました。
カナダから買収の提案
アリマンタシュオン・クシュタールとは
日本人には、なじみのないコンビニですが、そもそもどのような会社なのでしょうか。
フランス語で、「アリマンタシュオン」は食品、「クシュタール」とは夜ふかしという意味です。
1980年に開業し、米国で7,100店舗、カナダで約2,100店舗、世界各国合計で約14,500店舗を運営している世界第2位のコンビニ大手です。
日本でも名前を知られた「サークルK」などを次々と買収しながら成長を続けてきました。
今回の買収提案は、日本市場への本格進出を踏まえた一手です。
拒絶の通知
セブン&アイは、今年に入って、店舗の閉鎖や早期退職の実施など、事業の縮小を進めてきました。
そんな中、8月に突然買収提案が舞い込んできたのです。寝耳に水だったでしょうが、事業見直しを検討しているさ中だったので、渡りに船と言わんばかりに事業売却に応じる可能性があるのではないかと、考える向きもいたと思います。
この提案を受けて、セブン&アイHDでは、社外取締役で構成される特別委員会で提案受け入れについて、9月に審議を行いました。
その結果、6兆円では価値を低く見積もっているとして、クシュタール社に拒絶の通知を入れました。
買収額の積み増し
拒絶の通知を受けたクシュタール社は、10月に前回提案額に約1兆円を積み増した7兆円を再度提案してきました。
売り渡す気はない
拒絶の通知をした時点で、セブン&アイは、事業譲渡をする腹積もりはありませんでした。7兆円での譲渡に拒絶した場合、クシュタール社は敵対的買収を仕掛けてくる可能性があります。この敵対的買収に対抗するため、セブン&アイHDの株式をすべて買い上げて(MBO)、非上場化するそうです。
MBO実施に向けて
MBO(マネジメント・バイ・アウト)とは、経営者が事業継続を前提として、一般の株主から自社の株式を取得する手法です。
MBOと似ているものに、M&Aがあります。M&Aは、買い手が外部となります。
なお、会社はMBOを独断では行えず、買収提案受け入れの時と同様に、特別委員会の審査が必要です。
もっとも、外部委員会は会社の意思に沿って動くから、おのずと結果は見えている
MBOの概要
今回のMBOは、以下の資金調達が計画されています。
なお、創業家の「伊藤興業」と「伊藤忠商事」は、名字が同じ親戚企業と見紛うのですが、それぞれ別の会社です。「セブンイレブン」事業を日本で始めるにあたり、米国のサウスランド社とライセンス契約する仲介役に立ったのが伊藤忠だったのです。
MBOの影響
売上高規模10兆円の会社のMBOは前例がなく、過去最大規模となります。
これまでの最大規模は、大正製薬の7000億円規模だ
また、この計画概要の発表を受けて、セブン&アイHDの株価は上昇する一方、資金調達をする伊藤忠の株価は大きく値を下げました。
MBOの問題点
今回のMBOに関与する伊藤忠は、ファミリーマートの株式を保有しています。もし、セブン&アイHDの株式を持つことになると、競合2社の株式を保有することになり、競争法に抵触するおそれがあるのです。
もし、この買収とMBOの話が、先に行われた営業店舗の統廃合と早期退職の前に来ていたら、実施はされずに先送りされた可能性があります。
早期退職された方の「やめ損」がないといいですね。
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