制度と会社の本音
定年を60歳未満とすることは、法律で禁止となっています。さらに、65歳までの希望する社員に対して、高年齢者雇用確保措置をとっています。平均寿命が伸びているので、70歳まで会社に居続けられる措置もとられています。
一方、会社側は、いつまでも正社員でいられると、人件費がかかってしまいます。そこで、役職定年制度などで、社員の側から上手に辞めるもらい、安く雇える「再雇用」に仕向けます。社員の側には、この状況に諦める人、逆に会社を手玉に取ろうとする策士のような人など様々います。
非正規雇用者の人数が増えている
60歳を超えると、非正規雇用の数が格段と上がります。厚生労働省の「高齢社会白書」によると、65歳以上は75%が非正規です。
非正規になった途端、年収は下がる
再雇用になった途端に、年収は大きく減ります。
もし、年収の半分が減ってしまったら、今まで通りの生活はできませんよね。
正規社員と非正規社員の年収の差を見てみます。
正規(a) | 非正規(b) | a/b | |
20~24歳 | 346.1 | 278.7 | 1.24 |
25~29歳 | 437.3 | 315.4 | 1.39 |
30~34歳 | 508 | 328.1 | 1.55 |
35~39歳 | 573 | 329.5 | 1.74 |
40~44歳 | 616 | 339.2 | 1.82 |
45~49歳 | 652 | 335.6 | 1.94 |
50~54歳 | 693 | 334.3 | 2.07 |
55~59歳 | 701 | 351.2 | 2.00 |
60~64歳 | 537 | 428 | 1.25 |
江戸太郎
拙者が過ごした鎌倉時代は、「泣く子も黙る守護地頭」で、庶民は、皆年貢に苦しんでおった。
年収の壁
正規社員は、在籍年数とともに給料があがり、50代でピークに達します。
一方、非正規社員の年収には、「350万円の壁」があります。
60代で、再び正規と非正規の差が縮まります。正規の給料が減る半面、非正規に切り替えたベテラン正規が平均値を押し上げているからです。
正規は、年収が高くなるにつれて、天引きされる税金や社会保険料の負担も増えるので、実際の手取り額は少なく、決して生活が楽だということではありません。
条件にもよりますが、非正規の場合の試算では、保険料は半額近く、税金は5分の1近くに縮減される感じです。
たとえば、上の表の55~59歳・正規の平均年収700万円の場合、実際の手取り額は約520万円です。
これに対して、55~59歳・非正規の平均年収350万円の場合、実際の手取り額は約290万円です。
正規と非正規の年収の差は約350万円ですが、手取りで見ると約230万円に縮まります。
230万円の差の分、正規が有利ですが、非正規については個人事業主として働いているので、正規では恩恵を被れない生活上の出費を、経費計上できるメリットはあります。
正規社員は、税や社会保険料を給与から天引きされるため、自分の支払額を把握しにくくなることに加えて、税金や社会保険の制度に無頓着になりがちです。給与明細がオンライン化されると、余計にわからなくなります。また、社会保険料については、給与の約15%分を企業が負担しています。非正規は、すべて自己負担になりますが、負担額が少なく済んでいます。
非正規社員の戦略
多くの人に、非正規での立場は、やがて訪れるものです。
収入の減少を極力防ぐには、非正規の自由な立場を逆に利用して、いくつかの仕事をかけもちすること、極力節税をして、手取り額を増やすことが求められると思います。
繰り返しになりますが、目標としては
- 一か所だけで働かず、複数の収入源を探し、350万円の壁を超える
- できれば、会社を作り、法人化に伴う節税の恩恵をうける
ことではないかと思います。
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