読売新聞の早期退職記事を読んで

早期退職

https://news.yahoo.co.jp/articles/d09967ed99f9be24395b07aa2285357607cf7367?page=1

これまで、早期退職の事例をいくつか見てきた中で、記事への感想をいくつか述べていきたいと思います。

早期退職を募る企業の大半が「終焉」に向かっている

大手マスコミの記者は、取材先の企業の手前、乱暴なことや率直なことを言えないものですが、下記に列挙されている企業名を見る限り、大半が昭和で全盛期を迎え、平成で失速し、令和以降経営の維持が難しいと思われるところばかりのようです。

「企業寿命30年説」などと言われます。太平洋戦争終結後に起業した会社が、斜陽期に差し掛かるのが、ちょうど今ということなのです。

早期・希望退職を募集する大手企業続出、3年ぶりに1万人超の可能性…黒字のうちに構造改革か:写真
【読売新聞】 早期・希望退職を募集する大手企業が続出している。今年に入ってからの上場企業による募集人数は、すでに2023年の通年を上回った。人員削減は苦境下の最終手段とされてきたが、経営環境が良いうちに構造改革に踏み出す例も多くなっ

昭和20年から30年ごろは、社会が未成熟なので、生活の隙間や不便さを埋めるための商品やサービスが必要となり、その波にうまく乗れた企業が数多く成長してきました。科学技術が進歩して、パソコンやスマートフォンが普及し、産業が成熟すれば、これらの古いサービスが不要となるのは当然のことです。

オフィス複合機器を販売しているコニカミノルタ、化粧品を販売している資生堂などは、昭和期がピークだった好例でしょう。

再成長できる会社は数少ない

稀有な例は、富士フイルム

一方、企業寿命30年説の呪縛から逃れるため、新たな事業を開拓し、再び成長路線に乗ることは至難の業です。その数少ない成功の代表が、富士フイルムだと思います。

富士フイルムは、写真事業を中心に伸びてきた会社ですが、デジタルカメラの普及が見込まれる2000年ころから、従来の写真事業の収益が落ち込むことを予測していました。写真事業が売り上げの3分の1を占める構造から、新たな成長分野への構造転換を目指す必要が生じたのです。そこで、高級化粧品に進出し、アスタリフトなどの美白美容液を販売したのです。努力の甲斐があって、2023年度においては、富士フイルムの売上の3分の1が化粧品やヘルスケア関連になりました。もっとも、写真事業を切り捨ててしまったわけではなく、高級一眼ミラーレスカメラなどで売上の15%を確保しています。

前述のコニカミノルタなどは、かつては写真事業のシェアにおいては、富士フイルムをしのぐほどでしたが、事業転換戦略の失敗で、今もなお苦杯をなめ続けてしまっているのです。

江戸太郎
江戸太郎

世界的に見れば、最大手のコダックが、手を打てずに潰れてしまったね

激しいリストラが過去に

もっとも、富士フイルムの事業転換で人減らしがなかったわけではありません。2005年ごろから、写真事業を中心に激しいリストラを行い、1万人規模の従業員が消えていきました。当時の経営者・古森重隆氏はかなり強権的であったため、会社内には怨嗟の声が鳴りやまなかったことでしょう。それでも、これほどの方向転換を図らなければ、コニカミノルタ同様に会社は低迷していたでしょうから、結果論としては、やむを得なかったのでしょう。

思うようには成功しないのが現実です

富士フィルムのような徹底した構造転換を行って成功する企業はまれで、うまくいかない方が多数でしょう。たとえば、資生堂においては、日本市場に頼る事業構造を改め、外から経営者を招き、中国を始めとした海外への販売を拡張しましたが、思うようにはいかず、今年早期退職実施の憂き目に遭っているのです。

単に、シニア切りしているだけでは浮上しない

50代社員をリストラしてしまえば、人件費が浮くことに加えて、役職も空くので、若手社員にポストを割り当てることも可能です。企業にしてみれば、合理的で楽な手法ではありますが、裏を返すと、シニア社員を切り捨てることということは、これまで培ったスキルを切り捨てることでもあります。新たな事業を担う人材を急に育てることはできません。若い社員に任せることは、育成の上では結構ですが、単に若いからといって、経営に役立つかは分かりません。シニア層を単に切り捨てておしまいということでは、企業はこの先の浮上は困難でしょう。

早期退職をすべきか、お考えの人は、まず自分の会社の将来性を冷静に判断するべきだと思います。

この先、ひょっとしてつぶれてしまう会社もあるかもしれませんし、企業規模を縮小して続けていく会社もあるかもしれません。その中で、自分の居場所があるのか、またその仕事を続けて楽しくいきていけるか、ぜひ考えてみてください。もちろん、会社に残って新たな道を切り開けそうであれば、踏みとどまって頑張るべきです。年齢のことは、気にする必要はないと思います。逆に、年齢のことをとやかくいう企業は、この先の見込みはないと思います。

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