11月7日、日産自動車は、業績不振を理由に大規模なリストラ施策を発表しました。
2024年9月の中間連結決算は、純利益が329億円で前年同期比93.5%減でした。
2017年当時の世界販売台数が570万台ですが、2024年時点で4割以上減少しています。4割以上販売台数が減るのは、平成初期以来です。
ちなみに、削減する9,000人は、全従業員の約7%に相当します。日本国内で何人減らす予定なのか、詳細は分かっていません。
株価も大きく下落
今回発表の業績下方修正(営業利益が、5,000億円→1,500億円に減少)は、今年3回目でした。
この業績の落ち込みを反映して、当然株価は大きく下落しました。時価総額は、トヨタ自動車の30分の1まで縮小してしまいました。
売上減少の原因
すべての局面で負けてしまった日産自動車
自動車の販売状況が芳しくないのは、何も日産自動車だけではありません。中国市場では、トヨタとホンダも苦戦しています。
また、為替相場による影響もあります。現在は円安が進んでいるため、トヨタ、SUBARUなどは為替差益を上げています。
販売台数が伸びず、為替益の恩恵も蒙れなかった日産が大きく負けたという構図です。それでは、日産だけが、急激に売上を落とした原因は、一体何だったのでしょうか?
HVに対応していなかった
トヨタとホンダは、HV(ハイブリッド車)に対応してきましたが、日産はHVには対応せず、EV(電気自動車)に生産を傾倒していました。
HV車の動力源はガソリンなので、給油をすれば動きますが、EV車は長時間充電が必要です。その分、EV車は手間がかかり、販売台数の4割程度を占める米国市場では、敬遠される傾向にありました。日産は、見積もりを誤り、売上を大きく落としてしまったのです。
EVの価格競争に負けた
一方、EVにおいては、中国のBYDなどの安価なメーカーとの競争にさらされました。
日産のリーフは408万円から、またサクラは259万円からという価格設定です。
サクラは廉価ですが、航続距離が200キロ未満という難点があります。
一方、中国BYDのドルフィンは360万円から、韓国ヒョンデのインスターは300万円前半の価格帯です。
どちらもサクラより若干高価ですが、航続距離が350~400キロと長いため、中国製や韓国製のほうが使い勝手が良いのです。
カルロス・ゴーンの呪い
日産は、経営不振から建て直すために招へいしたカルロス・ゴーンによって、逆に特別背任と会社の資金の不正流用でボロボロの状態に陥っていました。
2020年の経営危機の際、日本政策投資銀行が1800億円を融資しましたが、うち1300億円について政府保証がついていました。万が一、融資が焦げ付いた場合、税金で補填するということです。国が下支えして再建を手助けしていたのです。
しかし、4年後の現在においても、再建の目途が立たないわけですから、この時の融資が、今後焦げ付いてしまうのではないかという恐れもあるのです。
熱意ある社員が生き残れるのか
クルマ好きが高じて、自動車メーカーの社員になった人は数多くいます。日産自動車においても、スカイラインやフェアレディZなどに憧れて入社した人が大勢います。
「北米市場で売るHV車がない」と嘆く社員がいますが、これまで日産自動車は、人気のある車を数々作ってきたのです。なぜ、この期に及んで、売る車がない事態に陥ったのでしょうか。
経営陣の責任
EV車に傾倒して、売上を落とした責任は、経営陣にあります。内田社長は、自身の報酬を50%自主返上すると発表しました。昨年の報酬額は、6億5,700万円ですので、依然3億円の報酬を得るわけですが、この期に及んで適切な判断といえるでしょうか?また、他の役員の責任はどうなるのでしょうか。
日産自動車は、指名委員会等設置会社です。「明確な形で執行と監督・監査を分離し、意思決定の透明性を図るとともに、迅速かつフレキシブルな業務執行を実行する」そうですが、この点において委員会はきちんと機能しているのでしょうか?
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