リコーの早期退職 2024

早期退職

2,000人規模の早期退職を発表

リコーが、早期退職募集を発表しました。

全世界で2,000人、日本で1,000人募集するそうです。希望者は、来年3月末に退職予定とのことです。

連結従業員数は、約80,000人ですが、日本は7,500人です。日本事業を相当縮小するようです。

会社ホームページには、「“はたらく”に歓びを」という、顧客のビジネスソリューションのキャッチコピーが踊っていますが、自社の状況を振り返ると、何とも皮肉な表現ではないかと思います。

リコーの沿革

リコーは、創業者の市村清が、理化学研究所で開発された感光紙の販売をもとにした企業です。かつて、銀座にあった婦人服販売の三愛、三愛石油、コカ・コーラウエストなどの「リコー三愛グループ」として、大きく成長を遂げました。その後、三愛はワコールに売却されるなど、グループ規模は縮小しました。

上向かない利益

近年の売上高と当期利益をグラフ化しました。
2021年3月に、コロナ禍の影響で売上高を落としました。その後、回復基調には乗せましたが、利益は右肩上がりとなっていません。ひとえに、複写機事業の低迷が原因だと思われます。

現在の事業形態

リコーと言えば、複写機の会社であることは知っていても、昨今の企業買収や事業整理で、現在は何をやっている会社なのか、今一つ分かっていませんでしたので、簡単におさらいをします。

複合機とカメラ以外は、「え、こんな事業に手をだしているの?」と初めて知るものばかりでした。暗中模索なのかもしれません。

オフィスプロダクツ

複合機(MFP)、プリンター、プロジェクターといった、リコーの伝統的な事業です。業界シェアはキヤノンに次ぐ第2位です。

コミュニケーション

Web会議、ビジネスチャット、会議室予約システムなどといった、オフィス関連のITサービスなどの事業です。

マネージド・ドキュメント・サービス

複写機、プリンターの利用コストを引き下げるためのコンサル業務といったところでしょうか。

商用・産業プリンティング

3Dプリンターやプロダクション・プリンターなど産業用プリンターの開発を行っています。

社会インフラ

エアコン、太陽光発電、LED、電力販売などの関連製品を扱っています。

ヘルスケア

医療機器管理、介護用製品などを扱っています。

カメラ

末端の消費者にとって、カメラはいちばんなじみのある事業です。pentax、GRのいずれも、手にしたことのあるカメラです。昔からのファンも多いため、リコーのブランドイメージ向上に大きく寄与しています。

ペーパーレス化の成れの果て

リコーの業績が低迷した大きな原因は、何と言ってもペーパーレス化による複写機事業の低迷だと思います。複合機の売上減少を補うべく、新成長産業へのシフトを模索していますが、歯車がかみ合わない状況が続いています。

2023年に社長が交代し、サービス事業への転換を加速させるべく、今回の早期退職を行ったようです。

かつて、追い出し部屋訴訟で負けたことも

2011年、社員を不本意な部署などに異動させたうえで、退職を促す「追い出し部屋」に追い込まれた従業員が、出向・配転命令の無効を争って、訴訟になりました。裁判所は命令を無効とする判決を出したことから、会社は和解に応じ、希望退職に応じなかった約100人に対する出向・配転命令を取り消すす事態に至りました。
出向や配転命令は、企業の人事裁量権の一つとして認められていますが、裁判になった場合に、その目的に問題があったり、労働者に大きな不利益があったりすると、権利を乱用したとして無効になります。

会社が退職に追い込むためのマニュアルを作り、従業員を心理的に追い込んでいたことや、自殺者が出たことなどを、裁判所が重く受け止めた結果です。

この事件を受けて、企業からは「追い出し部屋」を用いて退職に追い込む手法が消え去りました。

早期退職制度は、こうした経緯から生まれた、従業員から訴えを起こされないギリギリの手法のようです。

新人事制度の実態

一方で、2022年に「リコー式ジョブ型人事制度」なる制度を設けました。

原則57歳に設定されていた管理職の定年制度の撤廃や昇格試験の廃止を行い、シニア層の活躍と20代半ばの若手社員でも意欲と実力があれば様々なポストに就くことができるという制度です。

表向きは、希望を持てる制度改革のようでしたが、実質は役職定年制度の導入でした。管理職の最下層グレードである「AE=アソシエイト・エキスパート」の多くが、後に非管理職へと降格させるというものでした。降格でやる気を削いで、退職につなげる意図であったようです。

社員の受け止めは

今回の早期退職について、社員の多くはこれまでの退職勧奨や訴訟などの経緯を認識しているため、半ばあきらめの境地で淡々と事態を受け止めているようです。会社の将来について、楽観視している人は少ない印象です。

戦力減の中、新成長産業が育つのか

シニア層を放出して、残りの人員でサービス産業への転換を図るわけですが、複写機製造を軸に仕事をしてきた人たちのマインドチェンジは、一筋縄ではいきそうにありません。

昭和期に大きく成長した名門企業ですが、社会の変化に呑まれ、今後の成長に不安の影が覆っています。

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