会社員の場合、12月に年末調整が行われ、所得税が概算で差し引かれます。そして、年明けには確定申告があります、医療費控除、寄付金控除(ふるさと納税)などがある場合は、この時に払いすぎた所得税を還付してもらえます。
会社員ならば、ここまではよくお分かりでしょう。
それでは、退職金を受け取ったとき、確定申告が必要でしょうか?税金に詳しい人でなければ、即答できないかもしれません。
基本は、退職金は、税金が源泉徴収されるので、改めて確定申告する必要はありません。ただし、後述する「退職所得の受給に関する申告書(以下、退職所得申告書)」を提出しないと、確定申告が必要になります。
退職金を一時金でもらう場合
退職金にかかる税金は、退職した勤務先が受け取った本人に代わって手続きを進めてくれます。
具体的には、退職金を支払う会社が税金の計算を行い、退職金を支給する際に、所得税と住民税を源泉徴収して納税を行います。
よって、退職金を受け取った人は何もする必要がありません。
ただし、源泉徴収される金額は、退職金を受け取る人が「退職所得の受給に関する申告書」を提出していたかどうかで変わるので、注意が必要です。「退職所得の受給に関する申告書」とは、退職金を受け取る際に、退職金額や勤務年数などに合わせた正しい税額で源泉徴収を行うために必要な書類のことです。
退職所得申告書は、一般的には、退職手続きの際に勤務先から申告書の提出について案内されます。できればそのタイミングで忘れずに提出しておきましょう。
※上記は所得税についての条件です。住民税は確定申告が必要な場合があります。
退職所得の受給に関する申告書
この退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合は、退職金の20.42%が自動的に源泉徴収されます。
一方、申告書を提出した場合は、「退職所得控除」を使って、退職金にかかる税金の負担を大きく減らせることができます。退職所得控除を使うことができれば、退職金をまるごと手にできるケースもあるのです。
ところで、この制度を知らずに、20%近い税金を差し出す人がいるのでしょうか?考えられるのは、次のような場合です。
放置派は少数で、手続きをやらなかった方が多いのでしょう。退職を繰り返していたり、退職金が少ない場合は、20%近い源泉徴収の税額との差が少ないのではないかと思われます。
この申告書は、AからEまでの条件に分かれて記入することになっています。
長く勤めていた人は、A欄だけを書けばよいので、さして面倒ではありません。一方、複数回退職所得を受け取っている人は、BからEについても記入が必要になります。時間の経過で、過去の勤続期間が分からなくなってしまい、記入できなくなってしまう可能性がありそうです。
退職金を年金形式でもらう場合
定年退職の場合、企業年金や企業型確定拠出年金(DC)などから、退職金を何年にもわたって「年金形式」でもらうケースがあります。この場合、税金は退職一時金と同様に、基本的には受け取るタイミングで自動的に源泉徴収(一律7.6575%)されますが、雑所得として他の所得と合算の上、総合課税されるため、他の所得がある場合や所得控除を利用している場合は、確定申告が必要となります。
ただし、公的年金を受け取っている人には「確定申告不要制度」があり、次の条件をすべて満たしていれば確定申告をする必要がありません。
確定申告が不要となる条件(全部満たす場合)
所得控除から今後の方針を考える
そもそも、所得控除は下の15種類があります。詳しくは、国税庁や専門家のサイトで見てもらうとして、ざっくりと要点を抜き出すと以下のとおりとなります。
種類 | 条件 | 控除金額 |
---|---|---|
基礎控除 | 合計所得金額2,500万円以下 | 最高48万円 |
社会保険料控除 | 社会保険料を支払う | 支払金額全額 |
生命保険料控除 | 生命保険料を支払う | 最高12万円 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済84万円、iDeCo81.6万円 | |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払う | 最高5万円 |
障害者控除 | 本人、扶養家族が障害者 | 27~75万円 |
寡婦控除 | 夫と死別・離婚 | 27万円 |
ひとり親控除 | 所得500万円以下 | 35万円 |
勤労学生控除 | 納税者が勤労学生 | 27万円 |
扶養控除 | 扶養家族がいる | 38~63万円 |
配偶者控除 | 所得48万円以下の配偶者 | 最高38万円 |
配偶者特別控除 | 48万超133万以下の配偶者 | 最高38万円 |
医療費控除 | 医療費を支払う | 10万円を超えた部分 |
寄付金控除 | 特定団体に寄付 | 寄付の合計-2,000円 |
雑損控除 | 災害、盗難などに遭った | 損失額に応じて |
15種類の控除のうち、全員に共通するのが「基礎控除」で、大勢の人に関わる可能性が高いのが「社会保険料控除」「生命保険料控除」「医療費控除」「寄付金控除」というところでしょうか。
個人の条件や特性などは、さまざまなので控除で確実に得をするはないのですが、自分の意思で支払うと控除につながる「小規模企業共済等掛金控除」「寄付金控除」は積極的に使うべきです。「生命保険料控除」「地震保険料控除」は、控除の恩恵があるものの、保険料金額が控除されるのではないので、メリットはやや薄くなります。
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