フォルクスワーゲンを、残価設定ローンで乗っているのですが、期限の3年が近づいたため、ディーラーに呼ばれて、次の買い替えについて検討を始めました。
現在乗っている車種のマイナーチェンジ版を勧められました。悪い車ではないのですが、退職直後で収入が不安定の中、多額の金を支払うことへの忌避や、再度同じ車に乗るという飽きが、購入意欲を減退させました。
そこで、自宅に帰って、昨今の自動車価格の高騰の原因を調べてみたくなりました。
江戸太郎
拙者の時代は、馬を使っていた。牛馬は、高価だ。承久の乱以降、一層値上がりした。
昔と比べて、新車価格が高くなりました。以前なら買えたモデルも、現在では価格は高くて買えない車になってしまいました。2010年あたりから、車に限らず、物価は全体的にどんどん上昇傾向にあります。
新型コロナウィルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻の影響などが重なり、日本だけでなく、世界的に資源や物資が不足し、様々なものの値段が高騰しています。
1.新車の販売価格の変化
小売物価統計調査で、軽自動車と小型乗用車の価格の変化をみると下表のとおりです。
2000年 | 2022年 | 変化の割合 | |
軽自動車 | 879,025円 | 1,523,810円 | 1.73倍 |
小型乗用車 | 1,603,700円 | 2,162,934円 | 1.34倍 |
軽自動車の価格が高騰しているのは、高級化によるもので、例えばホンダのN-BOXは200万円の価格帯のものがあります。昔なら、インテグラやプレリュードを変える値段です。
2.なぜ自動車の価格は高くなったのか
①ハイブリッド化による高騰
最近はハイブリッド車が普及しています。このハイブリッド化による価格高騰が原因の一つで、ガソリン車に比べて40万円から80万円値上がりする要素となっています。
②装備の義務化・充実化による高騰
2022年の普通乗用車の生産台数は前年比2.5%の減少、生産金額は同11.8%の増加、生産単価が同14.6%上昇しています。
普通乗用車の生産金額の増加の要因を数量要因(生産台数)と価格要因(生産単価)、さらにはハイブリッド車と非ハイブリッド車に分けて要因をみます。生産金額が前年比11.8%の増加となった要因は、非ハイブリッド車の生産単価の上昇が10.6%となり、続いてハイブリッド車の生産単価が3.5%、ハイブリッド車の生産台数増加が0.1%、非ハイブリッド車の生産台数の減少が▲2.5%となります。
つまり、ハイブリッド車以外(EV車、PHEV車を含む)とハイブリッド車の生産単価の上昇が普通乗用車の生産金額を押し上げていることになります。
このところ自動車のみならず、原材料価格や原油価格の高騰、加えて円安が重なることで輸入品はさらに高騰しており、複数の自動車メーカーから値上げの発表がありました。また、道路運送車両法の改正(2020年1月31日)により2021年11月以降に発売する新型車は、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の搭載が義務化されています。安全運転機能がオプションから標準装備となったことも、このところの乗用車の価格上昇のひとつの要因と考えられます。
安全装備だけでなく、スマートキー、ドライブレコーダー、ACC(アクティブクルーズコントロール)、エアバッグ、カーオーディオ、足をかざすと、ドアを開閉する装置などが標準装備されています。これらの開発費や部品代が値上げの要因です。
③原材料費の高騰
車を製造するためには、鉄やプラスチックといった素材が必要です。これらの価格変動は、当然の値段にも影響します。例えば、鉄鋼の市場価格は日々値上がりしています。
厚板19×5×10の価格(1,000円/トン)
1990年1月 | 68千円 |
2024年2月 | 146千円 |
プラスチック原料
2020年 | 31,300円 |
2022年 | 72,500円 |
安全装備の充実や自動車に対して消費者が感じる利便性の基準が上がりました。そして、原材料価格の高騰によって、自動車の価格というのは致し方なく上がっていったのです。
3.新車販売価格が高いと感じてしまう理由の秘密
日本人の所得の変化について、この20年から30年にかけて、所得は全然上昇していません。
人によって違うじゃないかという話もあると思いますので、厚生労働省が発表している「2022(令和4)年・国民生活基礎調査の概況」のグラフを見てみましょう。
全世帯のデータを注目して見てみると、2021年度の平均所得が545.7万円、対して20年前の2000年度を見るとほぼ同じというか、むしろ下がっていることがわかります。
その一方で、所得は、ほとんど伸びていません。この推移のグラフにおけるピークは平成6年の664.2万円です。現在は、ピークと比べると118.5万円マイナスです。
一般的なサラリーマンの給与の伸び率もチェックしてみます。国税庁が発表している給与実態統計調査結果から、給与実態統計調査結果の1年通じて勤務をした給与所得者の一人当たりの平均給与の数値からグラフを作成してみました。
給与所得というのは、社会全体で見ても、まったく増えていないということがみて取れます。その一方で、自動車の新車販売価格は上昇を続けているという状態が現状です。ですから、車を買い換える際には低いグレードを選択したり、または下のクラスの車に変えざるを得ないことになるわけです。
自動車の新車販売価格の上昇については、電子制御による様々な安全装備を増やし、安全性を高めると言う観点では避けることはできませんし、今後も上昇を続ける可能性が非常に高いと思われます。
自動車価格の高騰によって、交通事故率が減少していることも事実なので、しばらくはこの流れを受け止めざるを得ないといえます。
次の車に何を選ぶかは、今後のブログに書きたいと思います。
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